婚姻費用が支払われない場合の対応|体験談つきで解説

離婚・法律

「婚姻費用の支払いが滞ったらどうしよう…」と不安に感じている方も多いでしょう。婚姻費用は、子どもと自分の暮らしを支える大切なお金。もし止まってしまったら生活に直結する大問題です。

この記事では、私の経験を踏まえつつ、婚姻費用の滞納が起きたときにできる具体的な対応をわかりやすくまとめています。

※婚姻費の内容については以下にまとめているのでご参照ください。

婚姻費用と養育費の違い・計算方法|体験談つきで解説

婚姻費用が滞る主な理由と注意点

婚姻費用が滞る主な理由

  • 支払義務者の経済状況の変化
    失業や病気、ケガなどで収入が減った場合、支払いが難しくなることがあります。「急に生活が厳しくなった」という理由で滞納になることもあります。
  • 面会交流の問題
    子どもとの面会がうまくいかないと、相手が「子どもと会えないのに婚姻費だけ払うのは不公平」と感じ、支払いを止めてしまうことがあります。
  • 支払う意思がない場合
    経済的には支払えるのに、「支払いたくない」と考えて滞納するケースもあります。

注意しておきたいポイント

  • 義務は自動的には免除されません
    収入が減っただけでは、婚姻費用の支払い義務は消えません。
  • 減額や免除には手続きが必要です
    婚姻費用を減らしたり免除したりしたい場合は、まず当事者同士での話し合い、または家庭裁判所での調停・審判が必要です。
  • 過去の未払い分には影響しません
    減額が認められるのは、合意や調停・審判の申し立て後の分からです。それ以前に滞った分は、原則として当初決めた金額を支払ってもらう必要があります。

私のケース(体験談)

私自身も別居中、「本当にきちんと支払われるのだろうか」と不安でいっぱいでした。幸い、私の場合は別居期間が1年だったので、その間は滞りなく支払いがありました。それでも、いつ止まってしまうかという不安は常にありました。別居期間が長くなると余計に不安だと思います。

また、彼から「子どもに会いたい」とか「面会交流をしたい」という話は、一度も出ませんでした。性格から考えて「お金を払っているのだから、子どもに会わせろ」と言い出すだろうと覚悟していましたが、実際には子どもに会うことはなくても、婚姻費用はきちんと支払われていました。

中には「子どもに会わせていないから婚姻費用をもらえないのでは…」と心配する方もいるかもしれません。しかし、婚姻費用は面会の対価ではなく、子どもと自分の生活を支えるための大切な義務です。面会交流がうまくいっていなくても、受け取って当然だということを覚えておきましょう。

婚姻費用はどう決まる?強制執行できるかチェック(離婚前・別居中)

状況決め方強制執行の可否ポイント
離婚裁判離婚訴訟の中で婚姻費用も請求可能可能判決確定後、家庭裁判所で給料や銀行口座の差押えなどができる
婚姻費用調停調停で取り決め(調停調書)可能(調停調書に強制執行認諾文言が必要)調停調書に「不履行の場合は強制執行できる」と入れると、滞納時にすぐ執行可能
別居中の話し合い(離婚前)当事者同士の話し合い・合意原則不可口約束だけでは強制力なし。支払いを確実にするなら、公正証書を作成する必要がある

婚姻費用の強制執行で必要な情報まとめ

1. 絶対に必要な情報(必須)

必要な情報理由
債務名義(調停調書・公正証書・判決など)これがないと裁判所で執行手続きができない
相手の住所・所在執行官や裁判所が書類を送達したり差押命令を出すために必要

2. 口座差押えで必要な情報

必須情報補助情報・ポイント
口座番号、口座名義(カタカナ)銀行名・支店名も控えておくと手続きがスムーズ

3. 給与差押え(会社員)の場合

必須情報補助情報・ポイント
勤務先会社名・所在地給与振込口座情報(銀行名・支店・口座番号・口座名義)を控えておくと確実

4. 住所が分からない場合の対応

  • 手元の記録を洗う(送金履歴、メール、SNS、源泉徴収票など)
  • 戸籍・附票・過去の住民票で転居先を確認
  • 勤務先や共通の知人から所在を確認
  • 債務名義取得後、裁判所や弁護士経由で所在照会や銀行照会
  • 必要であれば探偵に依頼して所在調査

5. まとめ

債務名義と相手の住所(または所在)がまず絶対条件
銀行口座差押えや給与差押えの情報も控えておくと手続きがスムーズです。
別居・離婚のときに情報を集めておくことが、養育費を確実に回収するための第一歩です。

ポイントの解説

1. 離婚裁判中に婚姻費用を決める場合

別居中の生活費が必要なときは、離婚裁判と同時に婚姻費用を請求することができます。
判決で婚姻費用も決まれば、もし相手が支払わなかった場合でも、家庭裁判所にお願いして給料や銀行口座を差し押さえることができます。
ただし、判決が出る前は強制執行はできませんので、その点は覚えておきましょう。

2. 婚姻費用調停のメリット

調停は裁判より手続きが簡単でスムーズです。
調停調書に「強制執行できる」という一文を入れておけば、万が一滞納されても、給料や口座の差し押さえが可能です。
「調停で決めたら安心」と覚えておくとよいでしょう。

3. 別居中の話し合いだけで決めた場合

当事者同士の口約束だけでは、法的な強制力はありません。
支払いを確実にするには、公正証書を作っておくことが大切です。
そうしておけば、もし支払いが止まっても家庭裁判所で強制執行できます。

婚姻費用が支払われないときの対処フロー

婚姻費用の滞納が発生した場合、以下の順で対応するのが一般的です。実行するごとに記録(日時・やり取り内容)を残しておくと後の手続きが楽になります。

1. まずは電話やメールで督促する
支払いの遅れについて冷静に状況を確認し、いつまでに払うかをはっきりさせます。
(※ただし、相手と連絡を取りたくない・安全上の理由がある場合は、催促を省略して裁判所手続きに進んでも差し支えありません。)

2. 家庭裁判所に履行勧告を申し立てる
電話やメールで改善しない場合、家庭裁判所を通じて「履行勧告」を出してもらえます(裁判所から相手に支払いを促す手続き)。
(※履行勧告は、調停調書や審判・判決など裁判所関与の文書があるケースで有効に働きます。)

3. それでも支払いがなければ、支払督促や強制執行を申し立てる
履行勧告で効果が無い場合は、裁判所に対して支払督促や、最終的には強制執行(給与・預金の差押え等)を申し立てることが可能です。

4. 婚姻費用の増額・減額の申立て
収入や生活状況が変わった場合は、家庭裁判所で婚姻費用の増額または減額を申し立てできます。自分が何かあって働けなくなった場合は検討してみてください。
例:相手の収入が大幅に減った場合、月8万円が5万円に減額されることが認められるケースもあります。

■ 決め方別の注意点(離婚裁判・婚姻費調停・話し合いでの別居)

上記の基本フローは、離婚裁判・婚姻費用調停・話し合いでの別居のいずれで婚姻費用を決めた場合でも使えます。ただし、実際に使える手段や順序に差がありますので注意してください。

  • 離婚裁判・審判(判決)で決まった場合: 判決・審判調書は執行力のある文書です。支払いが滞れば直接強制執行へ進めますが、まずは督促等を行うのが穏便です。
  • 婚姻費用調停で合意した場合: 調停調書も強制執行可能です。履行勧告や支払督促等の裁判所手続きを利用できます。
  • 話し合いでの別居(公正証書あり)の場合: 公正証書に強制執行認諾条項があれば、裁判を経ずに直接強制執行(給与・預金差押え等)が可能です。

    (※重要)督促は法律上の必須手続きではありません。 強制執行認諾条項がある公正証書であれば、督促をしなくても直ちに強制執行を申し立てることができます。ただし、実務上はまず督促を行い、相手に支払いの機会を与えてから差押えに進むことが多いです。これは、相手との関係悪化の回避、一時的な資金繰りの可能性、手続きや費用の軽減などの現実的な理由によるためです。

    相手と連絡を取りたくない場合や安全上の懸念があるときは、督促をせずに代理人(弁護士や司法書士)を通して強制執行に進めて問題ありません。

■ 連絡を取りたくない(接触避けたい)場合の進め方

私は旦那と連絡を取るのに今だに恐怖心があり、そういう方も多いのではないかと思います。
相手と直接連絡したくない・危険がある・精神的に負担が大きい場合は、催促を飛ばして最初から裁判所手続きに進む選択で問題ありません。

最後に一言: 最初から裁判所へ進むことは法的に問題ありませんが、相手との関係性や安全面、費用面(弁護士費用や申立て費用)も踏まえて判断すると良いでしょう。

心の負担を減らすために

滞納が続くと精神的な負担が大きくなりますが、「対応の手順」を整理しておくことで不安が和らぎます。まずは記録と冷静なやり取り、必要なら裁判所の力を借りることを検討してください。

この文章を読んで、婚姻費用が滞納されると思った以上に回収が大変だと感じた方も多いと思います。しかし、相手も給料の差し押さえなど強制執行が可能だと認識している場合、支払いが滞る確率は減ります。なので、話し合いでの別居の場合も、必ず公正証書などの手続きを踏んでおくことが大切です。

重要:相手の都合で勝手に支払いが止まることは許されません。正式な手続きを経ずに免除されることは基本的にありません。

最後に(読者へのメッセージ)

もし婚姻費用の問題で困っているなら、一人で抱え込まずに相談を。市区町村の法律相談や弁護士・家庭裁判所の窓口でまずは情報を集めるだけでも安心感が変わります。あなたとお子さんの生活を守るために、できることから一歩ずつ進めていきましょう。

養育費が支払われない場合の対応|体験談つきで解説

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