「養育費が支払われなかったらどうしよう…」と不安に感じている方も多いでしょう。養育費は、子どもの生活を支える大切なお金。もし止まってしまったら、子どもの生活に直結する大問題です。
この記事では、私の経験を踏まえつつ、養育費の滞納が起きたときにできる具体的な対応をわかりやすくまとめています。
※養育費の内容や決め方については以下にまとめています。
養育費が滞る主な理由と注意点
養育費が滞る主な理由
- 支払義務者の経済状況の変化
失業や病気、ケガなどで収入が減った場合、支払いが難しくなることがあります。「急に生活が厳しくなった」という理由で滞納になることもあります。 - 面会交流の問題
子どもとの面会がうまくいかないと、相手が「子どもに会わせていないのに養育費だけ払うのは不公平」と感じ、支払いを止めてしまうことがあります。 - 再婚や扶養家族の増加
再婚して新しい家族を扶養する必要が生じたり、扶養家族が増えたりすると、生活費の負担が増えて養育費や婚姻費の支払いが難しくなることがあります。 - 支払う意思がない場合
経済的には支払えるのに、「支払いたくない」と考えて滞納するケースもあります。
注意しておきたいポイント
- 義務は自動的には免除されません
収入が減っただけでは、養育費の支払い義務は消えません。 - 減額や免除には手続きが必要です
養育費を減らしたり免除したりしたい場合は、まず当事者同士での話し合い、または家庭裁判所での調停・審判が必要です。 - 過去の未払い分には影響しません
減額が認められるのは、合意や調停・審判の申し立て後の分からです。それ以前に滞った分は、原則として当初決めた金額を支払ってもらう必要があります。
養育費の減額例(子ども1人の場合)
- 相手が独身で扶養家族がいない場合:子ども1人につき月額4万円〜6万円程度
- 相手が再婚し、新しい配偶者や子どもを扶養している場合:子ども1人につき月額2万円〜4万円程度に減額されるケースもあります
ポイント
- 再婚しても養育費はゼロにならない
子ども自身の生活や教育費は支払義務者が負うものであり、支払い義務は基本的に続きます。 - 減額は家庭裁判所に申し立てて認められる場合のみ
「生活が大変だから」という自己都合だけで勝手に減額することはできません。 - 収入や扶養家族の状況に応じて変動する
減額される金額はケースごとに異なります。家庭裁判所は支払義務者の収入、扶養家族の人数、子どもの年齢などを総合的に判断します。
私のケース(体験談)
私自身、今も「いつ支払われなくなるのか」と不安に思っています。
また、元パートナーから「子どもに会いたい」という話は一度も出ませんでした。「面会していないから養育費はもらえないのでは…」と不安になることもありましたが、養育費は面会の対価ではなく、子どもの生活を支えるための義務です。面会交流がなくても、受け取る権利があります。
さらに、私の知り合いのケースでは、元旦那さんが「養育費を払いたくない」との理由で離婚してすぐに結婚相談所に登録し、子持ちのシングルマザーと再婚しました。その後、「再婚して新しい子どもができたから養育費を減らしたい」と弁護士をつけて減額調停を起こしてきたそうです。
知り合いは「どうせ減額になるから弁護士代はかけられない」と考え、弁護士をつけずに調停に参加しました。しかし、1人で子育てもして働いている身には、書類作成や相手との話し合いの過程が大きな負担だったと言っていました。
常々離婚は、お金と時間と気力を吸い取られるものだと思っています。だからこそ、可能であれば弁護士の力を借りることも選択肢の一つです。精神的な安楽か、お金の減額か、よく考えて決めたいところです。
養育費はどう決まる?強制執行できるかチェック
| 状況 | 決め方 | 強制執行の可否 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 離婚裁判 | 離婚訴訟の中で養育費も請求可能 | 可能 | 判決確定後、給料や銀行口座の差押えなどができる |
| 養育費調停 | 調停で取り決め(調停調書) | 可能(調停調書に強制執行認諾文言が必要) | 滞納時にすぐ執行可能 |
| 協議離婚(公正証書あり) | 当事者同士の合意 | 可能(公正証書に強制執行条項が必要) | 口約束だけでは強制力なし。公正証書を作成すると強制執行可能 |
養育費の強制執行で必要な情報まとめ
1. 絶対に必要な情報(必須)
| 必要な情報 | 理由 |
|---|---|
| 債務名義(調停調書・公正証書・判決など) | これがないと裁判所で執行手続きができない |
| 相手の住所・所在 | 執行官や裁判所が書類を送達したり差押命令を出すために必要 |
2. 口座差押えで必要な情報
| 必須情報 | 補助情報・ポイント |
|---|---|
| 口座番号、口座名義(カタカナ) | 銀行名・支店名も控えておくと手続きがスムーズ |
3. 給与差押え(会社員)の場合
| 必須情報 | 補助情報・ポイント |
|---|---|
| 勤務先会社名・所在地 | 給与振込口座情報(銀行名・支店・口座番号・口座名義)を控えておくと確実 |
4. 住所が分からない場合の対応
- 手元の記録を洗う(送金履歴、メール、SNS、源泉徴収票など)
- 戸籍・附票・過去の住民票で転居先を確認
- 勤務先や共通の知人から所在を確認
- 債務名義取得後、裁判所や弁護士経由で所在照会や銀行照会
- 必要であれば探偵に依頼して所在調査
5. まとめ
債務名義と相手の住所(または所在)がまず絶対条件
銀行口座差押えや給与差押えの情報も控えておくと手続きがスムーズです。
別居・離婚のときに情報を集めておくことが、養育費を確実に回収するための第一歩です。
養育費が支払われないときの対処フロー
養育費の滞納が発生した場合、以下の順で対応するのが一般的です。実行するごとに記録(日時・やり取り内容)を残しておくと、後の手続きがスムーズになります。
- 1. まずは電話やメールで督促する
支払いの遅れについて冷静に状況を確認し、いつまでに払うかをはっきりさせます。(※相手と連絡を取りたくない・安全上の理由がある場合は、省略して裁判所手続きに進んでも差し支えありません。) - 2. 家庭裁判所に履行勧告を申し立てる
電話やメールで改善しない場合、家庭裁判所を通じて「履行勧告」を出してもらえます。(※履行勧告は、調停調書や判決など裁判所関与の文書があるケースで有効に働きます。) - 3. それでも支払いがなければ、支払督促や強制執行を申し立てる
履行勧告で効果が無い場合は、裁判所に対して支払督促や、最終的には強制執行(給与・預金の差押え等)を申し立てることが可能です。 - 4. 養育費の増額・減額の申立て
収入や生活状況が変わった場合は、家庭裁判所で増額または減額を申し立てできます。
支払督促と強制執行の違い
養育費の不払いに対応する手段としてよく出てくるのが、履行勧告、支払督促と強制執行です。名前は似ていますが、役割や手続き、必要な条件が異なります。
| 項目 | 履行勧告 | 支払督促 | 強制執行 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 裁判所が書面で支払いを促す | 相手に支払いを督促して、支払わなければ法的効力を得る | 強制的に相手の財産からお金を回収する |
| 手続きの場所 | 家庭裁判所(相手住所地 or 子ども住所地) | 相手住所地の簡易裁判所 | 相手住所地の裁判所(差押える対象に応じて支部も可) |
| 必要な書類 | 申立書、証拠書類(養育費の取り決めなど) | 申立書、証拠書類(養育費の取り決めなど) | 債務名義(判決・審判・調停調書・公正証書など) |
| 裁判所の関与 | 書面で支払いを促すのみ | 形式的な審査のみ、異議がなければ確定 | 裁判所が差押え手続きの執行を行う |
| 異議の有無 | 異議はなし | 相手が異議を出せる。異議が出ると通常の訴訟に移行 | 原則異議なし。債務名義に基づき直接執行 |
| 費用 | 基本無料(郵送費のみ) | 比較的安価・簡易 | 手続きや書類の準備で費用や手間がかかる |
| スピード感 | 比較的速い | 異議がなければ比較的速い | 財産の特定や差押えの手続きが必要なため、やや時間がかかる |
支払督促と強制執行の流れ(簡単例)
実務上のポイント
- 履行勧告は、裁判所が書面で支払いを促す簡易な手続きで、費用もほとんどかからず速やかに行える。ただし、支払いの強制力は弱く、相手が応じなければ次のステップに進む必要がある。
- 支払督促は簡単・安価だが、相手が異議を出すと通常の訴訟に進むため、必ずしも即時回収にはならない。
- 強制執行は、債務名義があれば相手の財産から直接回収できるため、確実性が高いが手続きや書類の準備が複雑。
- 養育費の場合は、調停調書や公正証書を作っておくと、支払督促を経ずに直接強制執行に進める場合がある。
💡 アドバイス
養育費を確実に受け取るためには、調停調書や公正証書を作ることが安心です。支払督促は費用も少なく簡単ですが、異議が出るリスクがあるため、ケースに応じて弁護士と相談すると安心です。
履行勧告、支払督促と強制執行の手続きの場所
1. 原則
養育費の履行を求める「履行勧告」「支払督促」「強制執行」などの手続きは、相手方(支払義務者)の住所地の家庭裁判所が管轄です。しかし申立書は郵送で提出できます。
裁判所や執行官が手続きを進めるため、申立人が直接行く必要はほとんどありません。
ただし、支払督促で異議が出た場合や差押えの進行状況の確認は、裁判所から連絡が来るので対応が必要です。
3. 手続きの種類による違い
| 手続き | 申立て可能な裁判所 |
|---|---|
| 履行勧告 | 家庭裁判所(相手住所地 or 子ども住所地) ※裁判所が書面で支払を促す手続き |
| 支払督促 | 原則相手住所地 ※申立書は郵送でも可 |
| 強制執行 | 相手住所地の裁判所で申立て ※申立書は郵送でも可 |
💡 補足:
- 履行勧告自体は家庭裁判所に申し立てる手続きのひとつで、申立てにかかる費用は基本的に無料です。
- 支払督促は費用が比較的安く、請求額の0.4~0.5%程度の収入印紙で申立て可能。
- 強制執行も同様に請求額の0.4~0.5%程度の裁判所手数料が必要。弁護士に依頼する場合は着手金5~10万円、成功報酬は回収額の10~20%が目安。
- どちらも、裁判所に行かなくても郵送で手続きできます。弁護士に依頼すれば、さらに手間を減らせます。
支払督促・強制執行の裁判所の手数料 例:月5万円(養育費) × 12か月(年額60万円)の請求 → 約2,400円
💡 ポイント
- 支払督促は安く簡単に申立て可能
- 強制執行は、裁判所の手続きだけなら安価ですが、弁護士に依頼すると費用は数万円~十数万円かかる場合があります。
- どちらも郵送で手続き可能
養育費が滞ったときの連絡例・裁判所申立て例
滞納時にどのように連絡すればよいか、具体例を示します。冷静に、記録を残すことがポイントです。
1. メールやLINEでの督促例
例1:柔らかく確認する場合
件名:養育費のご確認
本文:
「〇月分の養育費ですが、まだ振込が確認できていません。お手数ですが、いつ頃振込いただけるか教えていただけますか?」
例2:強めに督促する場合(記録用)
件名:養育費未払いについて
本文:
「〇月分の養育費の振込が確認できていません。法律上の義務ですので、〇月〇日までに振込をお願いします。振込がない場合は、家庭裁判所への申し立てを検討いたします。」
2. 裁判所への申立て例
履行勧告や支払督促、強制執行を行う際の申立て例です。証拠を添えて提出します。
- 申立人(あなた)の氏名・住所・連絡先
- 相手(支払義務者)の氏名・住所・連絡先
- 請求内容:未払いの養育費(〇年〇月分~〇年〇月分)、合計金額
- 証拠:通帳の写し、振込履歴、メールやLINEでのやり取りのコピー、調停調書や公正証書の写し
- 支払いを求める理由:法的義務としての養育費
裁判所が督促を出すと、相手は振込を行うか、異議申立てをするかの対応を取ります。異議がなければそのまま強制執行も可能です。
💡申立書の書式は、裁判所の公式サイトから無料でダウンロード可能。最寄りの家庭裁判所の窓口でも入手できます。
3. 強制執行の申立て例
支払督促や履行勧告でも改善しない場合、家庭裁判所に強制執行の申立てを行います。手順の例:
- 申立書に必要情報(あなた・相手・請求金額・証拠)を記入
- 調停調書や公正証書、判決書の写しを添付
- 給与・預金の差押え先(勤務先・銀行口座)を特定できる情報を記載
- 裁判所に提出後、強制執行開始(給与や口座からの差押え)
💡相手の勤務先や口座が分かっていて、必要書類がそろっていれば、強制執行は自分でも可能です。ただし、相手の財産が分からない・異議が出た・やり取りが負担な場合は、弁護士に依頼すると安心です。
連絡を取りたくない(接触避けたい)場合の進め方
私は旦那と連絡を取るのに今だに恐怖心があり、そういう方も多いのではないかと思います。
相手と直接連絡したくない・危険がある・精神的に負担が大きい場合は、催促を飛ばして最初から裁判所手続きに進む選択で問題ありません。
最後に一言: 最初から裁判所へ進むことは法的に問題ありませんが、相手との関係性や安全面、費用面(弁護士費用や申立て費用)も踏まえて判断すると良いでしょう。
心の負担を減らすために
滞納が続くと精神的な負担が大きくなりますが、「対応の手順」を整理しておくことで不安が和らぎます。まずは記録と冷静なやり取り、必要なら裁判所の力を借りることを検討してください。
この文章を読んで、養育費が滞納されると思った以上に回収が大変だと感じた方も多いと思います。しかし、相手も給料の差し押さえなど強制執行が可能だと認識している場合、支払いが滞る確率は減ります。離婚する場合は、強制執行可能な形で養育費を決めることが大切です。
重要:相手の都合で勝手に支払いが止まることは許されません。正式な手続きを経ずに免除されることは基本的にありません。
最後に
養育費の取り決めは、ただの話し合いで終わらせず、
将来のトラブルに備えて「法的に効力のある形」で残しておくことが安心です。
お子さんの生活を守るためにも、しっかりとした準備をしていきましょう。


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